素材やデザインによってお店の印象を左右する「暖簾(のれん)」。この暖簾には、お店の顔としての役割があるため、こだわりのオリジナル暖簾をオーダーしたいという方も多くいらっしゃるかもしれません。
しかし、一口に暖簾と言っても、使われる生地や素材はさまざま。それぞれに質感や手触り、醸し出す雰囲気などの異なった特徴があるため、用途や目的によって適した生地を選ぶ必要があります。
そこで今回は、「こだわりの暖簾を作りたいけど、生地や素材はどうやって選べばいいの…?」とお悩みの方に向けて、暖簾に使われる生地・素材の特徴について詳しく解説していきます。
目次
暖簾に使われる生地の素材と特徴:綿
昔ながらの手染め暖簾に適しているのが、「綿」素材の生地です。伝統的な本染め手法を用い、職人が一点一点、丁寧に手染めする綿素材の暖簾は風合いも良く、多くの方に選ばれています。
ただ、「綿」と一口に言っても、薄手のものから厚手のものまでその種類は多岐にわたります。ここでは、代表的な暖簾に使われる生地をご紹介。それぞれの特徴をまとめていきます。
舞布(まいふ)

「舞布」は、ざっくりとした少し厚手の生地です。
丈夫で耐久性があるため、強い摩擦にも耐えることができるのが特徴。表面がフラットでしっかりとしており、飲食店からご家庭などにも使える汎用性の高い生地となっています。
葛城(かつらぎ)

「葛城」は厚手の綿生地で、綾織(あやおり)独特の斜めの織柄があるのが特徴です。
綾織とは、経糸もしくは緯糸を2~3本飛ばして織られる技法のことで、別名「ツイル」とも呼ばれています。どちらかと言うと、繊細さを求める場所というより、丈夫さを活かして風の強い場所の暖簾として利用されるほか、神社幕や消防半纏などにもよく使われています。
シャークスキン

「シャークスキン」は、その名の通り、サメの肌の表面のようなざらっとした織り目を持つ生地のことで、規則正しい織り目が特徴です。
柔らかさとほどよい厚みで汎用性が高く、さらに、価格面・耐久性・風合いなど、生地としての総合的なバランスが良いため、私たち水野染工場でも人気の生地。このシャークスキンは、主に店舗やご家庭の暖簾で使われるほか、半纏などにも使われています。
スラブ生成り

こちらの「スラブ生成り」も暖簾に使われる生地の種類の一つです。
ところどころに太い糸が織り込まれており、その表面の質感が和の雰囲気を醸し出します。また、少し凸凹のある表面のおかげで通気性が良く、夏に好まれる麻の代用としてもおすすめの生地となっています。
暖簾に使われる生地の素材と特徴:麻

涼しげな“和”を演出する場合におすすめなのが、「麻」素材の暖簾です。
麻は、吸水性や速乾性・通気性に優れているだけでなく、天然繊維の中でも特に強くて丈夫なのが特徴。暖簾のほかにも衣類や工業資材などに活用されている素材です。
麻素材の暖簾は、生成り色の風合いはもちろん、麻独特のシャリ感や透け感などが楽しめるため、特に夏に涼しげな雰囲気を作り出すのに最適の生地となっています。
暖簾に使われる生地の素材と特徴:化繊
暖簾を作る際には、綿や麻などの天然繊維以外に化繊生地もよく選ばれています。
化学繊維は独特の光沢感と発色の良さが特徴。幅広いデザインに対応ができ、耐久性も高いことから屋外で利用するのに適した素材となっています。また、綿や麻などの天然繊維と比べて安価なので、予算を抑えて暖簾をオーダーしたいというケースにも向いています。
エステル帆布

綿の風合いを持たせたエステル帆布と同様に、麻の風合いを再現したのが「エステル麻」。ポリエステル生地の一種ですが、麻の風合いと、しわになりにくい化繊の扱いやすさを兼ね備えた優れた素材となっています。
麻生地のような手織り感を残しており、シャリ感と透けるような風合いが“和”の雰囲気を演出してくれます。
テトロンツイル

暖簾の生地としてよく使われる生地には、「テトロンツイル」もあります。
テトロンツイルは、厚みのある丈夫なポリエステル生地です。縦横の引っ張りに強く、シワになりにくいほか、日焼けによる劣化が少ないという特徴があります。光沢があって色の発色が良いため、テトロンツイルの暖簾は高級感のある仕上がりになります。
マットガーゼ

「マットガーゼ」は、柔らかい風合いのポリエステルガーゼ生地です。
このマットガーゼは、繊細で軽やかな風合いを持ちつつも、シワになりにくい点が魅力。生地には透け感とシャリ感があるので、涼しげな雰囲気を演出することができます。
暖簾の生地・素材はどう選ぶべき?
ここまで暖簾の生地や素材についてまとめてきましたが、実際に暖簾を注文するときには「結局どう選べばいいの…?」とお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
そこで暖簾をどんな生地・素材で作ればよいか迷っている方のために、暖簾生地を選ぶ際の3つのポイントをご紹介します。
使用場所で選ぶ
暖簾の生地・素材を選ぶときは、使用する場所・シーンによって選ぶのがおすすめです。
例えば、暖簾を掛けるのが屋外か屋内かで、色褪せの原因となる日差しの強さが変わりますし、雨に当たるかどうかでも適した生地の種類が変わってきます。また、使用する場所によっては多くの人が暖簾をくぐることも。そのような場合は、できるだけ汚れにくい素材や汚れても気軽に洗える素材を選ぶなど、暖簾を使用するシーンによって生地を選ぶようにしましょう。
さらに、店舗で使用する場合は、暖簾がお店の顔にもなります。暖簾の持つ雰囲気がブランディングを左右することもあるため、その場所に暖簾をかけたときの透け感はどうか、光の当たり方やお客様からの見え方はどうか…なども考慮ながら生地を選ぶと良いでしょう。
予算で選ぶ
暖簾をオーダーする際は、染色方法やデザインももちろんですが、選ぶ生地によって価格に幅があります。
例えば、お店を新しく開店する場合は、できるだけ予算を抑えてオーダーしたいという方も少なくありませんが、そのような時は、予算に合わせた生地を選ぶのも一つの手です。
天然繊維よりは比較的安価だとされる化繊生地でも、綿や麻の風合いを再現したものもありますし、同じ綿生地でもさまざまな種類があり、それぞれ価格帯も異なります。また、暖簾の生地に防炎加工や撥水加工などを追加するかどうかでも予算感は変わってきますので、暖簾を注文する際には発注先にあらかじめ予算を伝えて、その中で一番適した生地を選ぶと良いでしょう。
お店の雰囲気に合わせて選ぶ
暖簾の生地を選ぶ際、お店のコンセプトやブランドイメージに合わせて選ぶのも一つの方法です。
例えば、日本ならではの伝統的な雰囲気を重視するなら、伝統的な染色技法で染め上げる綿生地、夏用に涼やかさを演出するなら麻生地…など、どういった雰囲気を作り上げるかによって生地を選ぶこともできます。
暖簾をオーダーするには?
暖簾は用途や使う場所によって、適した生地・素材を選ぶことが大切です。先程、生地の選び方については3つのポイントをご紹介しましたが、実際にはどのような流れで暖簾の制作を依頼すれば良いのでしょうか?
ここでは、私たち水野染工場「日比谷OKUROJI店」で行っている暖簾のオーダーから納品までの流れをご紹介します。
打ち合わせ予約
水野染工場「日比谷OKUROJI店」では、実店舗とオンラインの両方に対応しております。
「日比谷OKUROJI店」では、打ち合わせ可能なスペースもご用意しており、お客様が納得いくまでじっくりとご相談が可能。また来店するのが難しい場合は、オンラインでの打ち合わせも可能ですので、「染物のプロに直接相談したい」「実際に生地の質感を確かめながら決めていきたい」という場合は、予約フォーム、もしくはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
打ち合わせ
打ち合わせの際には、生地サンプルや色見本を確認しながら、ご希望の暖簾イメージを形にしていきます。
暖簾のサイズやデザイン、生地に付けておきたい加工など、細かくご希望をお伺いしていきますので、既に完成イメージがある場合はぜひお知らせください。また、もし現在お使いのロゴデータがありましたら、この打ち合わせの際にお持ちください。
暖簾の構成画完成・お見積もり
打ち合わせの後は、3営業日程度でお見積もりを作成。また、打ち合わせ時にお伺いした内容をもとに作成した構成・デザイン画をご確認いただきます。
なお、水野染工場「日比谷OKUROJI店」では、お見積りはもちろん、構成やデザインの作成を無料でご提供しております。
製作・納品
暖簾の生地やデザインが確定したら、受注内容と納品予定日をお知らせ。オーダー内容によって製作期間が異なりますが、およそ2~3週間程度が一般的な納期となります。
納品は、ご希望によって店舗お渡しか配送をお選びいただけます。
水野染工場「日比谷OKUROJI店」では、お店の「顔」である暖簾をオーダーメイドで丁寧に染め上げます。
- デザイン見本、生地見本、色見本などをご用意
- 染色職人に店舗で直接相談が可能
- 防炎加工、撥水加工などの後加工にも対応
創業明治40年の伝統技術と知識で、あなたの「作りたい!」をカタチにしますので、これから暖簾をオーダーしようとお考えの方は、ぜひ一度、水野染工場「日比谷OKUROJI店」にお問い合わせください!
染物を通じてお客様の大切な「こだわり」をカタチに

水野染工場「日比谷OKUROJI店」は、北海道旭川で明治40年から染物屋を営む株式会社水野染工場が「より染物を身近に感じていただけますように」との願いを込めて東京で展開する染物専門店です。
手ぬぐいや藍染商品の販売以外にも、藍染のデモンストレーションや体験イベントを行うなど、藍染を通じてお客さまの「想い」に寄り添う商品をお届けしています。
半纏・法被、暖簾、旗、手ぬぐい、帆前掛け、神社幟、神社幕…など、印染製品のオーダーメイドについても、直接店舗でご相談いただけますので、ぜひ一度、水野染工場「日比谷OKUROJI店」にお越しください。