飲食店の入り口や商店の軒先でよく見かける「暖簾(のれん)」ですが、実はその形状や用途によって、種類や呼び方に違いがあるのをご存じでしょうか?
そこで今回は、暖簾にはどのような種類があるのか、またどのような特徴・用途があるのかについてまとめていきます。代表的な暖簾の種類から日本文化として親しまれている暖簾にいたるまで、詳しくご紹介していきますので、ぜひ参考にご覧ください。
目次
代表的な暖簾の種類・用途は?
日本の伝統製品ともいえる暖簾(のれん)は、お店の営業を知らせるだけでなく、日除けや仕切り、インテリアとしてなど、さまざまなシーンで活用されています。そのため、一口に「暖簾(のれん)」と言っても、用途や形状・サイズによって呼び方も異なります。
ここでは、暖簾というものがサイズ・形状別にどのような種類に分けられるのか、また、それぞれどのような特徴や用途があるのかについて解説していきます。
一般的な暖簾
昔から暖簾の下がり(丈)は2尺(約60cm)ほどが多く、今でもその長さが一般的なサイズとなります。具体的な長さの目安としては、一般的な間口の場合、人がくぐる際に手を軽く使って通る長さになります。目隠しのために下がり(丈)を長くしたい場合は、90~120cm程度にすることが多いです。
暖簾の横の長さについては間口に合わせるのが一般的。昔は生地巾が約30~35cmであったため、間口に合わせると5枚巾や6枚巾の暖簾が多くありました(間口1間=6尺=約1820cm)。
この長さの暖簾は、使用する場所や用途を選ばず汎用性の高さが特徴となるほか、その約60cmという長さが、集客にも効果を発揮するのが特徴。
例えば、入ってみたいお店があっても、外から店内を見たときに中の様子がわからないと「ちょっと入りにくいな…」と思ってしまうお客様は少なくありません。しかし、下がり(丈)が60cmほどの暖簾であれば、その丈のサイズ感を活かして、外からでも商品や店内の様子が見えるようにすることも可能となります。
そのため、「いろんな方に来店してもらいたい」「店内がにぎわっている様子をアピールしたい」というようなときには、このサイズの暖簾が活躍します。
もともと江戸時代ごろから商屋の看板として利用されていた暖簾。現在では、巾が広い生地も多く出ており、サイズ・枚巾だけでなくデザインの幅も広がっています。現在では、主に飲食店などで屋号やロゴ・営業内容などを入れてさまざまな形状の暖簾が使用されているほか、一般家庭でも間仕切りや目隠し、日除け、インテリア…など、多様なサイズ・デザインの暖簾が使われています。

目隠しを目的とした暖簾
目隠しを目的とした暖簾は、長さを90cm~120cmにすることが多いです。間口によってはそれよりも長いものが適している場合もあります。
また横巾は、通路や人が出入りする開口部の巾に合わせて、横巾90cm以下の二巾(二枚巾:2枚の生地)の暖簾が多い傾向にあります。
このサイズの暖簾の主な用途は、その長さを利用して目隠しはもちろん、間仕切りや日除けなどのほかに、お店の看板や広告など。特に、店舗で使用される場合、店内の客席スペースから厨房やカウンター内などの作業スペースが見えないようにするための間仕切りに適しています。また一般家庭においても、その長さを活かして日除けや風除け、目隠し、間仕切り、インテリアなどとしても活用されています。
なお、暖簾は下がり(丈)を長くすると生地が丸まっていまうことも。生地が丸まってしまった場合はアイロン掛けをすることで、見た目を綺麗に保つことができます。

水引暖簾
水引暖簾とは、縦の長さが半暖簾よりも短く、約30~40cmほどの暖簾のこと。お店の軒先の端から端までの巾で作られており、普通の暖簾のように割れていない1枚の幕のような暖簾のことを指します。
この水引暖簾という名前は、祝儀袋や不祝儀袋などに用いられる飾り紐「水引」が由来だと言われています。もともとは、庇(ひさし)下の下塗り状態の土壁を隠すための装飾としてや、“魔除け”を目的として掛けられた布が、室町時代ごろに今のような水引暖簾の形状になり、広告や宣伝としても使われるようになったと言われています。
現代においてもこの水引暖簾は、目隠し目的でお店のカウンターと厨房の間に掛けられるほか、店内やショーケースなどのディスプレイやインテリアにも利用されています。

日除け暖簾
日除け暖簾とは、軒先から地面辺りまでの長さを持つ一枚布の暖簾のこと。日除け暖簾のほかにも、「日除け幕」や「店頭幕」と呼ばれることがあるほか、風が吹いたときにパーンという音がすることから「太鼓のれん」とも呼ばれています。
この日除け暖簾は、その名の通り日除けが主な役割。店内を日光から守るために、暖簾の上下に棒を通し、軒先から地面までを覆うようにして設置されるのが特徴となっています。
もともとは禅家で冬の隙間風を防ぐのに垂れ幕を用いていたのが、日除け暖簾のルーツだと言われており、江戸時代以降は、その一枚布の大きさを利用して屋号などを入れ、お店の看板としても多く活用されてきました。

伝統的な暖簾の種類
ここまでご紹介した代表的な暖簾の種類以外にも、日本には古くから特定の場所・シーンで使われているさまざまな暖簾があるのをご存じでしょうか?一体どのような種類の暖簾があるのか、わかりやすくまとめていきます。
楽屋暖簾
楽屋暖簾とは、その名前の通り、歌舞伎や日本舞踊、能楽や落語…などの楽屋口に使われる暖簾のことを指します。
この楽屋暖簾の主な役割は、目隠しです。役者やスタッフのプライバシーを守るため、楽屋の入り口に暖簾を掛けることによって外からの視線を遮るという大切な役割があります。
また、楽屋暖簾には、結界の役割もあると言われており、楽屋と舞台を暖簾で区切ることで神聖な舞台とプライベートな空間を分け、暖簾をくぐることで気持ちを切り替えることができます。
湯暖簾
銭湯や温泉、旅館の大浴場などの入り口に掛けられている暖簾のことを、湯暖簾と言います。
この湯暖簾は、入浴施設が営業中であることを知らせる看板のような役割を持つほか、男湯と女湯を区別するために使われることもあります。男湯と女湯を区別する際には、男湯では青や紺、女湯は赤やオレンジなどの色味がよく使われるのが特徴。また、浴場であることのシンボルとして、暖簾の中央に「ゆ」という文字や温泉マークを入れてデザインされることも多々あります。
絵暖簾
絵暖簾は、屋号やロゴではなく、絵を入れて染め上げた暖簾です。
店舗で使われる暖簾は、お店の看板としての役割を持っているため、店名やお店のロゴ、営業内容などを入れて染められることが多いのですが、絵暖簾では、暖簾の生地いっぱいにさまざまな絵や文様を描きます。なお、後述する花嫁暖簾もこの絵暖簾の一種となっています。
花嫁のれん
花嫁が輿入れする際に嫁入り道具として持参するのが、花嫁のれんと呼ばれる暖簾です。加賀藩の領地であった能登・加賀・越中地方で始まった風習の一つで、豪華な柄で染め上げられているのが特徴となっています。
婚礼当日、花嫁は嫁ぎ先の仏間の入り口に掛けられた花嫁のれんをくぐって仏壇のご先祖様に挨拶をします。そして、この花嫁のれんは、式後数日から一週間程度、新郎新婦の部屋の入口に掛けておくそうです。
さまざまな種類の暖簾を通じて日本の伝統を楽しむ
日本で古くから親しまれてきた暖簾。長い歴史の中で少しずつ形状を変えてはいますが、今なお、さまざまな種類の暖簾が私たちの身近な場所で活躍しています。
私たち水野染工場日比谷OKUROJI店でも、お客様のご希望に沿った枚巾で制作することが可能です。「奇数(3、5、7)が縁起が良い」「屋号を中心に入れやすい」などの理由で、3枚巾、5枚巾、7枚巾を希望されるお客様が多くいらっしゃいます。中でも、店頭の暖簾は、間口が1間(約180cm)で下がりが2尺(約60cm)で縁起を担いで5巾が多い傾向にあります。
「お店の開店に向けて、こだわりの暖簾を作りたい」
「新年に向けて暖簾を新調したい」
「日本伝統の染色方法で染めた暖簾をオーダーしたい」
…という方は、ぜひ一度、水野染工場「日比谷OKUROJI店」にお問い合わせください。私たち水野染工場「日比谷OKUROJI店」は、創業明治40年の伝統技術と知識で、あなたの「作りたい!」をカタチにします。
染物を通じてお客様の大切な「こだわり」をカタチに

水野染工場「日比谷OKUROJI店」は、北海道旭川で明治40年から染物屋を営む株式会社水野染工場が「より染物を身近に感じていただけますように」との願いを込めて東京で展開する染物専門店です。
手ぬぐいや藍染商品の販売以外にも、藍染のデモンストレーションや体験イベントを行うなど、藍染を通じてお客さまの「想い」に寄り添う商品をお届けしています。
半纏・法被、暖簾、旗、手ぬぐい、帆前掛け、神社幟、神社幕…など、印染製品のオーダーメイドについても、直接店舗でご相談いただけますので、ぜひ一度、水野染工場「日比谷OKUROJI店」にお越しください。